単語は全部知っているのに、文になると聞き取れない理由
単語も文法も知っている。なのに英語が流れてくると一気に崩れる。原因は「音の連結・弱形・短縮」と、日本人特有のカタカナ英語です。なぜ聞き取れないのかを分解し、耳の鍛え方まで具体的に説明します。
中級者なら誰もが経験する瞬間があります。文が聞き取れなかったのでスクリプトを見る。すると、そこに並んでいるのは全部知っている単語です。難しい語はひとつもない。文字で見れば一瞬でわかる。それなのに、実際の速さで流れてきたときは、ただの音のかたまりでした。
多くの人はここで「リスニングが弱いから、もっと聞かないと」と結論します。半分は当たっていますが、ほとんど役に立ちません。問題はもっと具体的で、名前があり、直接鍛えられます。
その前に:日本人にはもうひとつ、固有の壁があります
英語圏の学習記事はここから「音の連結」の話に入ります。ただ、日本語話者にはその手前にもう一段あります。カタカナ英語です。
私たちは多くの単語を、最初にカタカナの音として覚えています。ウォーター、マクドナルド、ボトル。ところが実際の発音は ワラ に近く、マクダーナルズ、バロゥ と流れていきます。文字で見れば知っている語なのに、耳に届いた音とは別物です。
つまり日本語話者にとって、聞き取れない原因は 2 段構えです。
- 記憶している音が実際の音と違う(カタカナ英語)
- 単語が文の中で形を変える(次に説明する 3 つの現象)
どちらも「知識が足りない」問題ではなく、耳に入っている音と、頭の中の見出し語が結びついていない問題です。だからこそ、書き取って照らし合わせる練習がそのまま効きます。
1. 連結(リンキング):語と語がくっつく
文字では単語のあいだにスペースがあります。しかし音にスペースはありません。前の語の末尾の子音が、次の語の頭の母音にそのままつながります。
TOEIC レッスンの一文を例にします。
It starts at nine thirty in the main conference room. — オフィスの質問(A2)
starts … at を 2 語で発音する人はいません。ひと続きで スターツァット のように出てきます。have to(A2)の check in online も同じで、耳には チェキノンライン と届きます。「in」が単独で来るのを待っていると、永遠に聞こえません。もう来ています。つなぎ目の中に隠れているだけです。
単語を完璧に覚えていても聞き逃すのは、このためです。勉強した単語と、耳に届く音は、別のものなのです。
2. 弱形:小さな語はほとんど消える
英語は強勢拍リズムの言語です。内容語(名詞・動詞・形容詞)ははっきり打たれ、文法語 — to, of, for, can, have, that — はリズムを保つために極端に圧縮されます。
We have to order more paper before we run out. — have to(A2)
ここの have to は「ハヴ・トゥー」ではありません。ハフタ です。"a couple of days" の of はただの「ァ」。"I can send it" の can は クン ほどに縮みます。学習者が can と can't をよく逆に聞き取るのは、これが理由です。強く発音されるのは can't のほうなのです。
英語が実際より速く感じられる最大の原因が、この弱形です。話し手が急いでいるのではありません。あなたが聞き取ろうと身構えている語こそが、圧縮されているのです。
3. 短縮:頻出の組み合わせが別の音に融合する
あまりに頻繁に使われるために、事実上ひとつの新しい語になった組み合わせがあります。going to → gonna、want to → wanna、did you → didja、don't know → dunno。
I'm going to start a new morning routine next week. — going to(A1)
自然な速さでは アイム・ガナ・スタート… です。頭の中の辞書に going to しか入っていなければ、gonna は未知語 — 一度も習ったことのない単語と、耳にとっては同じ扱いです。
「たくさん聞く」だけでは直らない理由
ポッドキャストを流す、字幕つきで海外ドラマを見る — こうした受け身のリスニングでは、この問題は直りません。理由はひとつです。脳は聞こえなかった部分を推測で埋め、しかも推測したことをあなたに教えてくれないからです。
だいたいの意味はわかる。わかった気になる。そして同じ 20 個ほどの弱形が、また 1 年間、見えないまま残ります。
デコード(音を言葉に変換する力)を直すには、聞き逃した音が必ず目に見えるようになる練習が必要です。それがディクテーションです。1 文を聞き、聞こえたとおりに書き、単語単位で照らし合わせる。ハフタ を「have」と書いたことも、飲み込まれた of を書き落としたことも、白黒はっきり残ります。
そして最も大事なのが次の一歩です。正しい文を目で追いながら、もう一度音声を再生する。 ここで初めて、音と綴りが結びついて記憶されます。
この手順を 1 日 15 分にまとめた記事もあります: 英語ディクテーションのやり方:1 日 15 分の練習法
朗報:覚えるべきパターンは驚くほど少ない
この問題が直しやすい理由がここにあります。英語には何千もの単語がありますが、高頻度の連結・短縮のパターンは数十個しかありません。hafta, gonna, wanna, didja、縮んだ of / to / can、子音と母音の連結 — この小さなセットが、日常会話のほとんどを覆っています。
ひとつ身につけるたびに、それを含むすべての文で、この先ずっと効き続けます。
どこから始めるか:
- 文がまるごと流れていってしまう段階なら: A1 のレッスン。まずは going to — gonna 型の短縮を、自然な 15 文で練習できます。
- ゆっくりなら聞けるが、自然な速さで崩れるなら: have to(A2) と 英作文の組み立てシリーズ。
- 試験対策なら: TOEIC リスニングシリーズ が、同じパターンをビジネス英語の音声で扱います。
1 文ずつ、音のかたまりがまた言葉に戻っていきます。しかもそれは、最初から知っていた言葉なのです。